まえのりとうしろのりのていぎ【前乗りと後乗りの定義】

「どうでもいいことの解説はさらにどうでもよい」の典型例

「よく解からないけれど、とりあえず解説する」の典型例

「間違ってはいないけれど、あまり役に立たない解説」の典型例

オートバイにおける前乗りと後乗りについてネットで調べると、次のような解説が見つかりました。
・前に着座したら前乗り、後に着座したら後乗り
・会陰で荷重したら前乗り、坐骨で荷重したら後乗り

見た目とか、荷重点とか、見たまんまの解説ですね。

このことの一番の問題はレース番組の一場面で現れます。

ゲスト解説者:「このライダーは極端な前乗りが特徴なんです」
司会者:「すごいですね~」
ゲスト解説者:「……」
司会者:「 ……確かに前に座ってますね~」

 

さて、上記の解説で事足りない方は続きをどうぞ。
巷ではよく前乗りと後乗りではどちらが有利か争われたりします。
この場合の前乗り、後乗りは、先の、重心とか位置とかのレベルです。

巷はともかく現場ではそれぞれの次元で異なってきます。

最初は後乗り。
安全だからです。
フロントゴケの痛そうなイメージに起因していると思いますが……。

次に前乗り、
クイックだからです。
前乗りがクイックなのは、行うアクションに慣性を利用できるからです。

次に後乗り
より高次元だからです。

これが倒し込みについての争いだったとしたら、
マシンの改良なりセッティング変更が次のアクションです。
一切セッティングを変更できない時であれば仕方がありませんが、変更できるのであれば見直してみます。

なぜなら後乗りのままではライダーにとって危険だからです。
マシンが振られたときとかの立て直しの成功率はかなり低くなります。
フロントゴケのほうが総じてダメージは少ないからです(多分)。
セッティングを施し、改めてトライすれば、さらにタイムアップする可能性も出てきます。
※暗に後乗りを極める前にセッティングはしないほうがよいといっています。

 

同様に、旋回中とか、加速時とか、それぞれの要素について
前乗り、後乗りのメリット、デメリットと対峙し、それぞれ対応し次元を上げていく必要があります。
旋回中でも前乗りがよいと言い張る人は、前後のタイヤ幅の違いが視野に入っていないか、
もうこれで十分だと思っている方々です。

このとおり、前乗り・後乗りはライダーの特長ではなく、単なる場面場面の状態になり、それこそ見た目に成り下がりました。

見た目ではなくもう少しライダーの意思なり特徴なりを取り入れた発展的な定義に次の文言があります。

・背筋を伸ばしたら前乗り、腰を入れたら後乗り

見た目は先の会陰と同じかもしれませんが、若干アクティブです。
一般的にもわかりやすいかもしれません。
しかしこれだけのことで、わざわざ前乗り・後乗りというほどのことでしょうか。
これだけで目に見えて何かが変わるとも思えなく、「それがどうした」状態に変わりありません。

それに、そもそも腰を入れるとか背筋を伸ばすとかは見た目のフォームではなく、
タイミングやサスペンションとして活用したいので、見た目ごときの枠にははめたくありません。

 

ということで、こちらをお勧めします。

・舵角を重視するライディングを前乗り、キャンバースラストを重視するライディングを後乗り

 

舵角重視は実際に旋回したい方向にフロントタイヤを向けて様子を見ます。
もちろんその操作に必要な各種手順は行うものとします。
とりあえず前が曲がればなんとかなるだろう的な思考です。

対してキャンバースラスト重視は、旋回方向に車輪を傾けて様子を見ます。
キャンバー角と接地面に対して働くキャンバースラストを利用しようという目論見です。
これはフロントでもリアでも効果は生じますが、フロントで行っても非効率なので実際はリアが主導となります。

これがなぜ前乗り後乗りなのかというと、それぞれの主役が前輪か後輪だからです。

負荷の割合やトラクションの問題ではありません。
ライダーが注視しコントロールする対象が前輪か後輪かということです。

ほとんど両者に違いがなく同じ事のようですが、物理的にはかなり異なります。
特にタイヤのグリップ面の重心の位置。

 

タイヤのグリップに頼るかタイヤの特性に頼るかの違いのような感じでしょうか。

所要時間は圧倒的に舵角重視のほうが短くて済みます。
大きな違いは、キャンバースラスト重視から舵角を重視した旋回に切り替えることは可能ですが、逆は難しいことです。
きっかけとして舵角を利用し、クイックにリアに荷重をかけ、結果的に後乗りというのはありです。

どうでしょうか?
単に前後の位置で語られるより何か難しそうな感じが漂ってきませんか?

そういうわけで前に座れば前乗りというのではなく、例えば、
ノリック乗りをしているノリックでも、舵角重視で旋回しているときと、
キャンバースラスト重視で旋回しているときがあるということです。

実際にはどちらか片方のみということはなく双方の割合を変えるということです。
この、それぞれの割合とタイミングをコントロールすることで望んだコーナリングに仕上げることができるでしょう。

この感覚を理解できないと、オートバイの前後のタイヤを使いこなした旋回ができなくなります。
キースコードが説明している
「前後のタイヤのグリップに合わせた荷重を行いスムーズに旋回する」
というのが机上の空論になってしまいます。
このことを踏まえたうえで「コーナリング時の前後タイヤの荷重配分」について次回説明ししたいと思います。

 

ヘイデンが前乗りで、ロッシが後乗りの図

ヘイデンが前乗りで、ロッシが後乗りの図

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