個々のライダーのライディングを動画や写真で分析するのは、ある意味危険です。

同様にメーカーによる特性の違いについてもです。

それはタイヤを含めたマシンのセッティングがいつでも同じとはいえないからです。

同様にライダーが施すセッティングも体格やライディングの好みや感覚の違いで様々です。

さらに当のライダー本人のコメントや、メカニックの意見すら、
認識不足やバイアスがかかったものであることがあります。

特定のマシンやライダーについての「ああだこうだ」が、自分に役に立つかどうかは、
甚だ疑問であると認識しておいたほうが間違いは少ないでしょう。

ライダーにとっての目標は特定のライダーではないからです。

しかし、だから、お手上げだと言っているのではありません。

ライダーにとって必要なのは、マシンの特徴を正確に把握し、許容できるもの、改善してほしいもの、
理由を聞かないとわからないこと、固定のもの、未知のものを、ぼんやりとでも把握し、指摘し、自己対応し、
ブレないマシン作りとライディング修正などを行っていくことでしょう。

外部の情報を鵜呑みにしてはいけないということはもちろん、重要なポイントを見逃してもいけません。

ここでは一例として、ホンダとヤマハのシート角度の違いが及ぼす影響について簡単にまとめてみます。

このまとめの精度はともかく、このシート角度を無視して、マシンの特性など語れはしないと私は思います。

 

ホンダとヤマハのシート角度の違いが及ぼす影響

ホンダのマシンはヤマハに比べ、シートの角度が地面に対して平行寄りのマシンが目につきます。

2007ヤマハ YZR-M1 FIAT YAMAHA C.EDWARDS

2007ヤマハ YZR-M1 FIAT YAMAHA C.EDWARDS

 

RC211V

RC211V

m03

NSR500

1995 NSR500

 

この角度差は前後輪への荷重配分に大きく影響します。

腰の角度が多く変わり、荷重配分で言えばホンダのほうが後ろ寄りになるといえるでしょう。

静止時より、加減速が加わる実際の走行ではより顕著になるでしょう。

相対的にステップとシートの荷重配分はヤマハよりシート荷重の比が大きくなり、
腰回りの細かい動きがしにくいことと、見た目にどっしり感が出るため、
「ホンダのマシンはライダーがシートにすっぽり収まり、あまり自由に動けないようにしている」
というポリシーのようなものがライダー間ではささやかれたりしていました。

実際には、長い歴史の中ではシートの角度も様々に変わっており、
特にシートとステップの位置関係は同じライダーですら様々で、
メーカーのポリシーではなかったのかもしれません。

なので一言で「ホンダのシートは……」などとは特定できません。

近年ではあまり差がなくなってきていることと、そもそもシート角度差は、
ライダーの上半身の体格による調整だったというポリシー不在なオチも考えられます。

 

このフラットなシートは、ダートトラック系のライダーにこそマッチングします。

マシンの上で自由に動き、暴れるマシンを自由にコントロールするためには、シートに角度なんて邪魔ものです。

フレディ・スペンサーの「いきなり曲がる」は、このシート角無くしてはできなかったでしょう。

たとえ、単なる普通の街乗りバイクに近い作りだった、というのが実情だったとしてもです。

1985年のダブルチャピオンの時のマシン

1985年のダブルチャピオンの時のマシン

 

しかし、たとえシート角の決定が単純にシートレールの角度による制限があったとしても、ここはセッティングの範疇です。

ヤマハ系のケニー・ロバーツのシートはフラットでした。

そこでのヤマハのポリシーは何だったのでしょうか?

推測するに、一般にラップタイムを縮めることイコール勝利に近づくことの要因として、「ストレートを短時間で走る」、「低速区間(コーナー)を速く走る」というのがあります。

そのために生まれた逆シフトもそうですが、立ち上がりのライダーの姿勢についてはヤマハのシートのほうが分があります。

戦闘的な気分のみならず、腰の角度の影響で高くならざるを得ない重心によって、フロントの安定性に貢献していたことでしょう。

さらに時代的な背景からか、フラットなシートよりも前傾してるシートのほうが「ハイスピード・ライディング」には適していたのでしょう。

ヤマハは一貫して前傾しているシートに傾向していっています。

前傾したシートほど運動性が上がります。

ライダー主体でセッティングしていくと、「楽をする」というイメージのフラットなシートは敬遠されたのでしょうか?

オートバイ好きの好みそうな「ライダーが乗りこなす」感が定着し、ヤマハライダーは、「職人」と呼ばれる満足感はともかく、

速く走りきるというレース自体の目的とのバランスを考えると、この選択は正しかったのでしょうか?、

対してホンダは「ライダーはパーツ」感が定着している感がありますが、本当にそうだったのでしょうか。

このようなポリシーの中で製作されたマシンに新しく乗るライダーたちにとって

そこから作りこむマシンやセッティングは、もはやライダー本来の特徴とはいえません。

マシンがコンストラクターとライダーが満足したマシンに仕上がっていないのであれば、特徴の分析すら無意味です。

「低速区間を速く走る」ことについても、たとえホンダ車のほうが単純にブレーキング競争に優れていたとしても、シートに起因するフロントの加重コントロールのしやすさにより、トラクションが安定しているヤマハのほうが、平均すると短い時間で走ることがいまだにできるのは実績の差なのでしょうか、ライダーの特性の差なのでしょうか、それとも……。

現在はトップライダーのメーカー(コンストラクター)間の行き来があることから、もはや見た目のマシンの特徴は薄れてきていると思いますが、特性にはまだ開きがあるようで、ホンダの中本氏によるといまだヤマハに優位性があるということです。

MCNより

コーナーの旋回速度では、ヤマハ機の方が明らかに速いし、ヤマハ機がアクセルを開けるポイントもうちよりずっと早い。ホンダはブレーキングに安定性に、そしてうちのマシンは低速コーナーで機敏に曲がれると言う点でも優れています。タイヤがたれてきれからは、うちのマシンだと好ラップタイムを維持できることがポイントです。…コーナーで大したスピードは出てませんからね。ヤマハはタイヤの消耗に関してタイヤエッジに若干ストレスをかけてますね。

ブレーキやターンインのそれぞれの特徴は、ABSの登場によりヤマハの進入有利が一旦は薄れ、TCSの登場によりホンダのリアタイヤの進入リアスライドの優位性が一旦は薄れたりしまっていると思われます。

しかし、今だからこそ、スペンサー乗りの復活が現実味を帯びてきているのではないでしょうか?

このぐらいフラットなシートが出てくるとおもしろい

このぐらいフラットで自由に動けるシートのマシンが登場するとおもしろい

ブレーキによる横方向のスライドではなく旋回Gで生じるスライドのほうがラップタイムにはより有利だと思います。

電子デバイスだけでは不足で、荷重の移動を加えたほうが、より効果的と思われるからです。

鈴鹿の予選で見せたシューマッハの1コーナーの走りを、翌年はすべてのドライバーがトライしている。
そんな光景をMotoGPでも見てみたいものです。

 

 

 

シートの話ではありませんが、250のマシンにまたがってポジションを確認した時に、「ヤマハよりホンダのマシンのほうが戦闘的だ」と言われた時期があります。

そうか! と、スケールを持って確認するとそんなことはない、ホンダのほうが、ポジション的にはおとなしいのです。

違いは、単なるフロントカウルのスクリーン周りの形状だったりします。

ホンダ車には、スクリーン内にヘルメットをうずめられるような無駄なスペースはなかったのです。

 

95’ HONDA RS250

95’ HONDA RS250

YAMAHA TZ250

YAMAHA TZ250

90’ YAMAHA TZ250  3年間生産された後方排気モデル

90’ YAMAHA TZ250 
3年間生産された後方排気モデル(私は89’で参戦していました)

(ちなみに上記3台のシート角はほぼ同じです)

 

マシンに騙されず、メカニックにも騙されず、自分にも騙されない、確固たるものさしが必要です。

ロッシの言にあるとおり

「目標はライダーではなく、トップを走っているときはコースであり、前に誰かがいたらそいつである」、

自分を信じ自分を高めろということです。

 

以上、

シートもセッティングパーツだよ

というお話でした。

れいによって事実と異なることがあったとしても、「考える」ということについて参考にしてください。

加藤大治郎のマシン

加藤大治郎のマシン

 

 

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