接近戦・決勝に強くなる スパーリングとクリンチ

決勝でズルズルと順位を落としてしまうのは、歯がゆいのでなんとかしてもらいましょう。

V3を誇るウェイン・レイニーにしても競い合いの末の優勝率は高くありません。

彼の場合はメンタルが原因ではないでしょう。
レイニーはAMAスーパーバイクの経験があるにしてもエリート街道を歩んでいるとも言えます。

キース・コードのスクール卒業生なことに加え、彼の理論の理解者でもあることから想像するに、接近戦、というよりダークなレースには縁がなかったのではないでしょうか

それでも、チャンピオンになりたいライダーの転倒率は低いに越したことはありません。

自分に厳しくだけではなく、他人にも厳しくある必要があります。

 

 

別の才能

ライディングテクニックや、メンタル、フィジカル以外の面にも才能や努力が必要なのは言うまでもありません。

今回はそれらにも目を向けてみましょう。

例えば、
「電車の通勤ラッシュ時とかで階段とかで渋滞している時に後ろからグイグイ押してくる人」
「満員電車の中で、べったり寄りかかってくる人」

マナーというより意味不明です。
ベタベタ接触してくるのも不快です。

でも決勝に強い人はこういう人だったりします。
馴れ馴れしく人当たりよくなのか、人を人とも思っていないのか…

なにより、こちらがイライラした時点で「勝負あり」です。

確かに「満員電車で楽して立っていられる方法」における、
「吊革につかまり、かつ人に寄りかかる」はかなり高ポイントです。

2010年のWSBK BMWがいた頃

2010年のWSBK BMWがいた頃

 

別の才能

通勤ラッシュを知らない一部の人は次のような練習をしているそうです。

レーシングカー(四輪)では車両感覚を掴むためだけに、お互いの車を接触させたままコースを走行します。
ボクシングで言うスパーリングですね。
レーシングスピードが必要なので、相応のドライバーと相応の車で行うようです。
誰かの自伝情報

その程度では懐は痛まないのが前提のようです。

こうして、接触してもリタイヤしても「体も心も痛くも痒くもないドライバー」に仕上げていくようです。

 

これほどではないにしても、二輪でもやはり優位な環境というのが存在します。

 

  • 家にダートトラックコースがある
  • 競いあうライダーに事欠かない
  • 一緒に遊んでくれる自分より上手いライダーがいる
  • お父さんが元ライダー
  • 人脈が凄い

家庭でできる「決勝に強くなる」なり方

やはり、競い合いなので、何でもかんでも、比較した場合、より強いか、経験豊富か痛くも痒くもないほうが有利です。

出来る限り練習しておくことが、近道というか、取りこぼさないために必要です。

通常必要とされる、メンタル、フィジカル、マシンセッティング、ライディング技術とは別のことを身につけましょう。

接近戦に慣れる

車両感覚を掴む

いわゆる車両感覚を掴む練習を行いましょう

さきの先の四輪の様な練習ができれば理想的ですね。

実際のレース環境では危険なので、ミニバイクとか、お遊びカートとかの低次元でも感じはつかめるかもしれません。

ベタベタする

野球の試合やコンサートなどのイベントとかの待ち行列でベタベタしてみるのも…

周囲に負担や迷惑をかけないようにするか、訳を話して協力してもらいましょう。

単にベタベタするのではなく、相手が快く感じる接し方や、逆に不快に感じる方法など、きっと奥深い技があることでしょう。

 

とにかく、身近にあるもので工夫して、接近戦に慣れるような練習を取り入れてみることです。

少なくとも、接近されてこちらがストレスを感じるようでは「ズルズル」から脱却できません。

 

距離感に慣れる

接近戦には気持ちが大事とはいえ、やっぱり基礎力は必要です。

視覚情報を蓄える

接近戦の時の周囲の状況を眼になれさせます。

抜きつ抜かれつなので動きを伴なっていることに加え、そういう環境時には脳が明晰であるとは限らないことを忘れないようにします。

少ない情報で満足できる状態に仕上げておく必要があります。

 

特に決勝でしか本気出さない人は要注意です。

練習時とポジションやスピードが異なる場合は、見えるものが全然変わるので、勝てないばかりか危険です。

 

次のような状況で視覚情報を入手する練習をしてみましょう。

  • 本番以上に伏せる
  • 焦ってみる
  • よく見ない
  • 「頭が真っ白」にする
  • 「目の前が真っ黒」にする

そうして深視力の精度を上げて正確な距離感を掴みます。

 

ブレーキングのパターンを増やす

あわせてブレーキングの距離感も掴んでおきます。

距離感というか減速感というか、想定する速度になるまでにどのくらいの距離になるかを掴みます。
もちろんライバルも走行しながらの、複合した距離感を掴むことが必要です。
チキンレースみたいなことが有効だったりすることでしょう。

 

ブレーキングの練習方法

ブレーキングの練習をしましょう。
目的は追突したりしないように、握りごけしないように、焦らないように、状況に応じた作戦の成功率を上げるためです。
これは特に順調に育ったサラブレットの方のほうが経験不足なような気がします。
ダークを知らないというか、マシンが速いので苦労したことがないとか…

練習は通常のサーキット練習で行います。
相手は自分より少しだけ遅いライダーか、良き理解者などです。
要は一緒に走れる人です。

最初に注意事項ですが、コーナーよよく吟味し、ラインがクロスしないように行うことが重要です。
相手に接近、あるいは追い越すような時には相手のアウト側を確保できていることが必須です。
イン側に割り込むときのパターンでも、練習時の走行ラインはアウト側で行います。
イン側に飛び込んで結果を試すのには、十分経験を積んでからで十分間に合います。

練習は先行するライダーと速度差を持ったブレーキングをすることです。
いつもの、自分のお気に入りの「自己ベスト」とは異なるブレーキングをします。
異なるだけで結果が同じではもちろん意味がありません。
結果をいつもと異なる結果になるように、もちろん思った通りにできるようするための練習です。
比較対象(相手)は「自分自身」でもあり、「ライバル(前走車、時に後走者)」でもあります。
そしてその時の風景を脳裏に叩き込み、そして未来の自分の映像を計画(イメージ)できるようにすることです。
ここまでいけば、デジャブのように再現されたアクションは、さながら上空から俯瞰した神の目のようにも感じられることでしょう。
そう、セナの「神の眼」は、単なるイメージトレーニングの賜物です。

いつもの走りを「いつもと同じ場所でいつもと同じスピード」※とすると、練習の目標は次の三通りがあります

  • いつもと同じ場所でいつもと違うスピードでバンキング
  • いつもと違う場所でいつもと同じスピードでバンキング
  • いつもと違う場所でいつもと違うスピードでバンキング

※「いつもと同じ場所でいつもと同じスピード」は厳密にいうと「いつもと同じスピードで走行している時にいつもと同じ場所でブレーキングを開始し、いつもと同じ場所で、更にいつもと同じ時間でブレーキングが完了し、更にその時のスピードはいつもと同じ」状態のことです。

この違いは自分のみならず、練習相手にもありえることですが、まずは練習相手に【いつもと同じ場所でいつもと同じスピード」で走行してもらいます。

時間差を作るブレーキング練習

相手と異なる時間軸でブレーキングを始め、そして完了します。
要はブレーキングをしている時間が相手(いつも)と違うということです。
そして重要なのは、この時の走行スピードも、同じ、速い、遅いの三パターンもはっきりと認識した上で組み合わせること。
プロダクトが時間で、スピードはサブプロダクトみたいな感じです。
その練習の成果物は距離差です。

距離差を作るブレーキング練習

相手と異なる距離軸でブレーキングを始め、そして完了します。
要はブレーキングに要した距離が相手(いつも)と違うということです。
同じタイミングでブレーキングを開始し、そして終了するのですが、終わってみたら、相対位置が変わっている、という状況です。
そして重要なのは、この時のスピードも、同じ、速い、遅いの三パターンをはっきりの認識して練習することです。
プロダクトが距離で、スピードはサブプロダクトみたいな感じです。
この練習の成果物は時間です。

この練習をしっかり行うと(きっと)様々なパターンで攻略できることに加え、無駄な握りコケや無駄な心拍数の増加や無駄なストレスを抑えることができるでしょう。
肝心なことは、作業完了時の状況を目標とし、底に至るまでの結果をしっかり行うことです。
その時の相手との距離感はじわじわだったり、ものすごい速度だったりするにしても全て想定範囲内の動きとして対応できるということです。

これらのうち、相手をパッシングできるかもしれないパターンの一部を列挙してみます。

  • 相手と同じタイミングでブレーキを始め、相手より早くブレーキを終える
    コーナリングで抜こうという時です。
  • 相手より遅くブレーキをかけ始め、相手より速くブレーキを終える
    相手が格下の時とか。
  • 相手より遅くブレーキをかけ始め、相手と同時にブレーキを終える
    並んで、抜きたい時とか。
  • 相手より遅くブレーキをかけ始め、相手より遅くブレーキを終える
    抜いた上にブロックするときとか

応用

大事なことは抜くことがメインではなく、様々な速度差を作り、脳裏にパターンを植えこむことです。

そうして混戦時に、より冷静に対応できるように視覚情報を蓄え、

想定外のアクションを受けた時に過剰に反応しないように、減速するにしても目的を持った計画的作業を行うように、冷静に対応できるようにしておきます。

このようにして、むだな転倒や、周囲のライバルからの評価を上げつつ、勝利への執着心をのぞかせると、自他共に安全になるかも、しれません。

 

妨害工作

脚だし

電子デバイスの違いからかブレーキング時の脚出しがまだまだ全盛のWSBKですが、トム・サイクスのようにリヤのハンドブレーキを装着すると右コーナーでも安心して妨害できるようになります。

左コーナーでは頑張っている時のレオン・ハスラムのようにシフトダウンに合わせて脚をバタバタ開閉するのも効果的でしょう。

クリンチ

基礎ができたら、次は表題のクリンチです。

ボクシングにおけるクリンチは、「抱きつくことで相手の好きにさせない、なおかつ休む」です。
レースでは走行ラインをブロックしたり、精神的にやる気にさせないなど、色いろあることでしょう。
クリンチの良い所は、「相手が疲れる」ことです。
そして、距離やスピード差のある接触よりは安全でもあることです。

ここでは先の満員列車の楽に立っていられる技をつかいましょう。

 

勝てない時を知る

チャンピオンシップのためには、大きくポイントを失わないようにすることも大事です。

特に、チャンスが巡ってきた時ほど、身の丈以上のことをしてしまいがちです。

ピット、チームの戦略を優先するようにしましょう。

それは、別にゆっくり走ることではなく、より集中していつもより良いライディングを行うということなのですから。

ウェイン・レイニーはチームメイトのルカ・カダローラとの比較で、「マシンの状態が勝てる状態ではない時」に勝つことを諦めるのがカダローラ、それでも勝とうとするのがレイニーとしてよく引き合いに出されます。※

そのことの賛否はともかく…

ライダーは基本サラリーマンでもないので…

チームや関係者とライダーは、チームとしての仕事をしてもらえる関係になっておくことが大切ですね。

 

では。

 

 

 


かつて四強とうたわれたレイニーを始め、往年のライダーの時代はWindows95より以前。Blogなんて2000年以降だし。

そんな昔のことを知りたいときには、富樫ヨーコ氏の書籍は貴重です(現在HRCに在籍(多分))。

彼女にしか聴くことの出来ないインタビューや、周辺事情などが、まさしく字引のように詳しくたっぷりつめ込まれています。

今となっては貴重なアイルトン・セナの死に対してアメリカの雑誌に掲載されたレイニーのインタビューの抜粋とか、とか

レイニーの左手小指が切断されてしまっていることなどは、ケガだらけのレース界では、些細なことなのかもはやググっても出てこない…

 

この↓書籍は図書館でも読めますが、古本が安く出ているので購入してしまった方が速いです。

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