
パッシングとバッシング
とにかく抜きたい時
予選はともかく、決勝では1つでも上のポジションを狙います。
戦いなので、もちろん譲ってはくれません。
当然相手のほうが実力が上のこともあるわけです。
実力を発揮するだけでは足りない時には、相手のポジションを奪わせていただきます(パッシング)。
そして何度も繰り返すのも大変だし、かえって危険なので、
そういうわけで、叩きのめさせてもらうわけです(バッシング)。※
叩きのめすのが温情ってことですね。
なので正しく叩きのめした場合には、褒め称えこそすれ、批判してはいけません。
※パッシング【passing】:[名](スル)追いぬくこと
バッシング【bashing】:[名](スル)打ちのめすこと。 手厳しく批判すること。
抜くというアクションは、必ずしもクリーンには終わらないこともあります。
この際、批判されることと同義だと思っておいたほうがよいでしょう※。
抜き方
今回は、ラインとか、スリップストリームとかレイトブレーキングとかの普通の抜き方は割愛します。
それだけでは足りない時のプラスアルファのはなしです。
つまり、抜きたい相手に「何か」をするわけです。
実際どうやるか? というのは、ある意味、簡単です。
やられたら嫌なことをやれば良い。ということと、
精神的負担と物理的優位を組み合わせればより成功率が高くなるということです。
繰り返し観察し、習得し、実践していきます。
そして自身で攻撃法と、防御法とを、繰り返しレベルアップさせていきます。
それでは順番に。
プレッシャー
まず最初は、双方にとって害がない走法から始めます。
相手に、存在を知らせたり、あるいは抜くぞとばかりに威嚇したりします。
一番良く見るパターンです。
いきなりイン側に現れて、びっくりしてラインを外してしまうようなシーンはよく見られますよね。
これを、相手を威嚇しているといったり、横に並んだだけといったり、ラインを塞がせてもらったとか、いったり、言われたりします。
全体的にそうですが、自分の気持と実際の行動はなんであれ、公式には「自分のラインを走行しているだけ」という表現となります。
そしてこれは、自分からやることもできますが、実際には相手からやられることのほうが多いと思います。
そこでまずは、相手がどういう風に仕掛けてくるかを観察し、そのうちのどれが一番ビビって、どれが効果が無いかを学習していきます。
そして、ビビった仕掛けへの対応を研究します。
コーナリング中には、一般的にはイン側に割り込むのがセオリーといわれています。
とはいえ、前走のライダーがノリックだったりシュワンツだったりするとイン側に入り込むのはリスキーと感じることでしょう。
それはノリックやシュワンツなどのリーンアウト系のポジションは、万が一、接触してしまう時の接触対象がライダーではなくマシンっぽいからです。
ハングオンしているライダーのイン側はまるでクラッシュパッドのような安心感を与えてくれます。
対してマシンは、硬いし、熱いし、回っているから、できれば近づきたくないと感じるからです。
そんなライダーにはアウトから顔見せする方がマシでしょう。
しかしアウトからの威嚇は例えばマルケスのようなライダーには効果がありません。
なぜならほとんど視界にないからです、
そして、自身がビビらなくなったら、その仕掛けはもはや「威嚇」ではないので役に立たなくなったと言ってよいでしょう。
この仕掛は、自分より(経験値的に)格下ならともかく、ライバルには意味が無いと思ってよいでしょう。
そして自分の攻撃力と、防御力をどんどんレベルアップさせていきます。
脳へのプレッシャー
単純に抜かれることへのプレッシャーにばかり目が行きますが、別にどこにプレッシャーを掛けても、効果がありさえすればよしです。
例えば通常であれば絶対に走らないようなラインを走っているところを見せると、「あいつは何をやろうとしているのだろう?」とうまく行けば思ってくれて、集中力が若干それるかもしれません。※
※相手にブロックされて抜けない時は、普段は通れないラインでも通ることができて、結構、相手(前走車)の視界に入れることはできます。
タイミング
(実際には完全にビビらなくなることはないと思いますが)プレッシャーだけではビビらなくなったら、
次はタイミングを工夫してみます。
同じことを、相手の意表を突くような形で行います。
例えば相手の一番得意としているところで、アタック(のフリ)をしてみたりすることです。
相手の得意なところも、マシン的な有利ならともかく、そうではなく、ライダーが得意としている場合は、ある意味限界が近いともいえる場合もあります。相手が限界を超えてしまいやすいといえるでしょう。
間違ったタイミング
定番の方法に「プレッシャーを掛けるために相手の弱点をつく」というのがあります。
が、「相手の苦手な箇所で横に並ぶ」ということと、「相手の前でベストな走りをする」との違いは、微妙です。
低次元な相手には良いですが、高次元な相手とは、相手に限界を教えてあげるようなことになってしまいます。
気が付くとますますパッシングポイントがなくなってきてしまいます。
相手の苦手な箇所に対しては、一発で処理して、相手に上手くなる余裕を与えないことが重要です。
相手によりますが、相手の苦手な箇所ではなく得意な箇所を突くのがプレッシャーを掛けるポイントということもあり得るということです。
全てはタイミング
プレッシャーに限りませんが全てのアクションは、タイミングによってその効果が変わってきます。
何かのアクションが、役に立たなかったり、徐々に役に立たなくなったりしたとしても、簡単にその方法を放棄せずに、そのタイミングに変えてみることで効果が復活するかどうかを必ずチェックしたほうがよいでしょう。
妨害する
横に並ぶ
妨害にもいろいろありますが、先の「横に並ぶだけ」でも十分な妨害になります。
これがストレートなら、まるで妨害ではないと周囲は思ってくれるでしょう。
しかし、コーナリングに向けて倒しこむスペースが確保できなければ立派な妨害です。
さらにいうと、この、相手の倒しこみのアクションに若干でも影響が出るようなプレッシャーを感じさせることに成功したら、もうそれは立派な妨害です。
ラインが微妙に狂ったり、タイヤの消耗が微妙に増えるだけで、もう作戦成功です。
この程度なら誰にも文句を言われることはないでしょう。
この妨害の程度を徐々に増やしていくことで、より短時間にその効果が現れるようになり、究極的にはその場でパッシングという形で現れます。
ラインを塞ぐ
コーナーの侵入でも、立ち上がりでも、あるいはどこででも、相手のラインと言うか、気持よくいつもどおりの走行を妨げるようにラインを塞ぎます。
前項と同じように必ずしも相手のライン上を塞ぐがなくても、なんらかの効果は発揮できます。
肝心なことは、その結果、自分がどうなって、相手がどうなるかを認識しておくことです。
その場で効果が出なくても、どこかで相手のリズムに狂いが生じるようであれば、技のストックに入れておきましょう。
誰からもバッシングされない「抜き技」は、それとは気づかせずに、しかしリザルトには結果が出るような方法が一番です。
例えば、フロントタイヤを相手に消費させるのは大変ですが、リヤタイヤを余計に消費させるのは、割りと簡単なことでしょう。
利用する
次は、相手を「相手とは思わず物だと思い」ちょっと利用させてもらいます。
例えばおもいっきりハングオンしている前走車がいたとします。
これは、とってもイン側に割り込みやすいと思いませんか。
それも接触しない程度よりは、接触させた方がより楽です。
ちょっとぶつけてより効果的に旋回できるという作戦を、自分の旋回計画に盛り込むわけです。
慣性を消し、旋回性を産ませていただかせてもらいます。
通りたいところを通る
そして、最後は「自分のラインに何かが居た」を実行します。
ポイントは「負けない」か「転ばない」ようにすることです。
例えば、できるだけ低重心、リーンウィズ、伸び縮み可能、な状態をよしとします。
そして逆にそのポイントに持ち込むためには、上記の状態から一旦大きく逸脱させる事が重要です。
距離や時間を作ることで、このアタックだか、耐アタックに十分な効果を発揮できるようになります。
一般に大柄、重量級な方がこの戦いにには強いとされていますが、必ずしもそうとは限りません。
大柄、重量級が、逆に不利な瞬間を狙えば、形勢逆転です。
外乱への収束に不利な瞬間、すなわちバイクと重心が離れている時や、腕や足や胴体が伸びきった時を、適切な方向からアタックすれば良いことになります。縮切った瞬間も同様に不利な瞬間といえるでしょう。
そして同じように見える動作でも、ほんの少しの余裕なり、考え方で、不利にも有利にもなります。
例えば、頭から思いっきりリーンするミニバイク乗りも、頭をイン側に振っている最中や、腕が伸びきっていたら不利ですが、逆の方向に働いた瞬間からそれは有利になります。マルケスがいくら派手なポジションになったとしても、曲がっている肘と、しっかりホールドしている腰回りが、いつでも臨戦態勢なことがうかがい知れます。
ロッシのような大柄なライダーの攻略は大変でしょうが、めげずに、長時間の接触となるように準備して…ひとたび乱れたら、収束には時間がかかるかもしれません。
方法の詳細は・・・動画で! (見つけてください)
ということで、パッシングはするものですが、同じ次元でされるもの…。
暇つぶしの方もおられるでしょうが、生活がかかっている方もいるのです。
※
全体的に前回の補足です。
言うまでもありませんが、実力に差がある時には、実力でスパッとパスすればよいし、おとなしく譲ってあげればよいでしょう。
此処ではあくまで実力が拮抗している場合で、はためにはどちらが勝っても良い様なときに、どうせなら勝ちたいという時のお話です。
あくまでルールの中で、できればクリーンに戦うべきであるのは言うまでもありません。
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