マルケスのバンク角70度時の横Gと、マシンとライディングのセットアップ

バランス能力?

マルケスが転倒しにくいことの評価はバランス能力ではなく、ホンダとマルケスとでおこなったマシンセットアップの結果に対して賞賛すべきです。
ということを説明します。

バンク角70度の横Gとマシンとライディングのセットアップ

もしもマルケスのマシンのタイヤが自転車のロードレース並みに細く、そしてリーンウィズだった場合の横Gは、バンク角が70度だと約2.7Gになります。
68度の2.4Gに対し10%増し、60度の1.7Gに対して50%増しの横Gに耐えているということになり、1度2度で結構な差になります
(簡易計算ツールを右メニューに置いたのでお試しください。)

注目すべきは、見た目のマシンバンク角と実際のバンク角は異なるということです。
マシンに対するライダーの位置はもちろんですが、何よりタイヤの幅を考慮しないといけません。
マシンをバンクさせるにつれて、タイヤと地面の接地面(点)が内側にシフトするからです。
実際のバンク角というのがマシンとライダーを合わせた重心点と設置面(点)とした場合、
タイヤが太くなればなるほど、実際のバンク角より、見た目のバンク角の方が深くなります。

で、このことが意味するのは、重心点が変われば、実際のバンク角、あるいは横Gに影響が出るということです。
例えリーンウィズで乗っていたとしてもバイクの上で伏せたり起き上がったりしたらそれだけで影響が出るということです。
無視できるかどうかはともかく、同じRで旋回できたとしてもよれよれよれることになります。
見た目のバンク角が同じであれば体を起こしている方がより強い横Gが発生しているともいえます。
同じことがサスペンションにも当てはまり、タイヤサイズやサスペンションのストロークで横Gや前後の荷重バランスなど様々な個所に影響を及ぼしています。

例えばリアがスライドしたときの挙動的に安定する形状や太さと適正スライド率などが存在することになります。
前後同じようなサイズのオートレースのマシンみたいな場合はデメリットになるので、サスなしのリジットのほうがリカバリー性が高いとかの結果になったりとか。

昔ながらのサスペンションセッティングからの決別

低次元、特に街乗りなんかでは、マシンセッティングといえば、車勢を整えて、後はダンパーをバンキング時のバンク角速度と同調させれば一丁上がりだったりします。したとします。

セッティングのかなめだったりしたとしても、そのことで、他の挙動のためにセッティングしたくてもバンキングに影響があるような変更を簡単には手が出せなくなります。

一つのコーナーではうまくいっても他のコーナーではうまくいかなくなってきたりします。

対してサスペンションに頼る正攻法ではなく、サスペンションに対する入力が一切変化しないくらいの高次元な制御や、逆にほとんどリジットにしてサスに頼らないとかののライディングを普通に出来るようになってきているようです。

このことでサスセッティングの格段に自由になってきます。バンキング時のストロークを考慮しなくてよいとなると、次はコーナリングです。
それもジオメトリーみたいな単純な姿勢ではなく、より次元の高いところ、ブレイク付近での挙動に使えるということです。

ブレイク付近の荷重コントロール

昔ながらの外足荷重、内足荷重を考えてみましょう。

例えばフロントがブレイクしてスライドしだした時を考えてみましょう。
この場合のブレイクはオイルに乗ったり、荷重が抜けてのスリップの事ではなく、オーバー荷重というかフロントタイヤが横Gに耐えられなくなってきた場合のことです。
この時に、できれば転びたくなく、そのままリカバリーして何事もなく通過したいと希望したとします。
この状態からリカバリーするのに適したライディングとしての外足荷重とか内足荷重のそれぞれのメリットとかを見てみましょう。
外足荷重というのは外乱に対して最終的にはマシンが起き上がる方向にしかコントロールできません。外足の荷重ヌケというコントロールを考慮したとしてもそれはすでに外足荷重乗りとは言えないので除外です。
対する内足荷重というのは同じ視点からは内側にマシンを倒す方向に働きやすいし荷重ヌケも起こりにくいのでマシといえます。
なぜマシという表現なのかといえば、マシンとタイヤがそのような場面になった時の物理的現象としては、横Gに耐えられなくなりスライドしだした時のスライドしたことによるタイヤの横Gとスライド量とサスの状態による伸び縮み量による、重心点と設置面との不整合が起きるわけです。
これを収束できる方向に各種モーメントが働いてくれる乗り方がこの場面での望みといえます。
使える持ち物は、自力と外部からの力、すなわち横Gと縦Gです。
バランス能力とか反射神経とかを使って自力でのコントロールに頼りがちですが、物理的な反応速度とか判断能力とかを鑑みると決して得策ではないでしょう。
そして横Gという物もスライドなどで横Gの値が変化するときに重りや、おつりになり得る逆効果になってしまう可能性も否めません。
であれば横方向とか遠心力方向にモーメントを持っている脚よりも、たとえばドォーハンの左手みたいに抑え込むというのもありだし、マモラのシート乗りというのが垂直方向のモーメントを作り出しやすかったりします。
タンクのすべり止めはお尻のずり落ち防止や加圧(加重)補助に使うのが効果的だと思います。
結局昔ながらの腰くの字だったりします。

教習所的なニーグリップや外脚ねじりこみによるタンク抑え込みは、(モーメントとかよりも時間差攻撃になってしまう要因から)ハイサイドしたいとしか思えないので却下です。

体を使ったバランスを取る操作というのを行う方法もあるとは思うのですが、ライダーが本当にその場面での適切な往復作業をこなせるとは思えないので押すか引くか何もしないかとかのを考慮したライディングスタイルをとる、というのが現実的な回答だと思います。
ライダーはそれなりの対策を練り、待ち構えるのですが、何にしろ必要以上に動かないほうが良いでしょう。

マシンセッティング

そしてライダーのアクションの方向性が定まったところで、マシンセッティングの出番です。
ライダーの方向性が出ていない時のマシンのセッティングは適正値ではなく一方的な方向性を指し示す方の方がまだマシだったりするでしょう。

マシンセッティングとしては、たとえばマルケスに対して、フロントが滑り出した時に姿勢が変わらずマシンを倒しこむようなライディングフォームというかスタイルをとってもらいます(滑った時にマシンが起き上がる乗り方ってたいてい大きくタイムロスします)。
んで、ジオメトリー的にちょうど良いセッティングを施せばよいわけです。ロガーがあるので、前後のGと位置変化とサスのストロークとか時間軸の組み合わせで簡単にできるのではないでしょうか?実現していないとしたらやってないだけだと思います。

結局のところ、ホンダが昔からライダーに望んでいた「”ライダーはマシンに乗っているだけ”という外乱に対して予測可能な状態を提供してくれれば、マシンは完璧に仕上げて見せる」を具現化してしまったのではないでしょうか。
そのライダーになり得たマルケスの成功要因は「コーナーのアプローチはどんな状態でもなんとかできる」という柔軟性から、より高度なコーナリング時のリカバリー特性に行き着けたんじゃあないかと。

なので、第二のマルケスになりたかったら、まずは、レギュラーターンで柔軟性を確保するところからはじめ、コーナリングアプローチはタイミングの無いノーブレーキターンとかを極めると面白いんじゃあないかと(他人事です)。

施したセッティングが、思った通りの挙動になったらしめしめなのではないでしょうか。

 

そして荷重の麺でライダーのくの字という話が出てきましたが、これはサスや重心の移動にも活用できます。
可動範囲の中間でデフォルトのポジションを構成しておくと自由度が上がるということです。
ただ、単なるくの字は特性面が特定の方向に特化することになるので片手落ちになります。

そこでライダーはライダーでくの字を作り、さらにリーンウィズではなくハングオフとか腰をずらしたうえで、バイクとライダーでくのじを作るとより外乱への対応性が上がります。

そうすると、マルケスみたいに、同じフロントスライドでも上半身がを落とすパターンと、バイクをさらにバンクさせるパターンとを使い分けられるようになることでしょう。

 

以上

ルケスのバンク角70度時の横Gと、マシンとライディングのセットアップ

横Gを正確に解析すれば、フロントがスライドしても自己修復して、自律走行ができるマシンはセットアップできるのではないでしょうかという話でした。

と、いう話です(もちろん妄想)。

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